12月1日(日)、広島県歯科技工士会はいつ来るかわからない災害への備えの一環として「災害時用即時義歯ハンズオンセミナー」を広島歯科技工士専門学校にて開催しました。この講習会は広島県からの補助金を活用した事業で、数年間の計画・準備を経て、ようやく実現したものです。
近年、日本では大規模災害が頻発しており、そのような災害時には多数の被災者が避難生活を送ることが余儀なくされます。その中でも、高齢な避難者においては義歯の紛失や不適合による摂食障害や栄養状態の悪化、さらには口腔内環境の悪化による誤嚥性肺炎の発生が深刻な課題となっており、歯科技工士の迅速な対応が求められています。最近の調査では、被災地にて歯科技工士が行う災害時用即時義歯の製作支援が大きな役割を果たしているというデータが発表されており、避難者や歯科医師からの需要も非常に高いことが明らかとなっています。そこで今回、災害時用即時義歯の製作技術を会員に広め,災害時における地域医療支援体制の構築と強化を目的として、最低限の機器と材料を用いて誰もが簡単に製作できる広島県歯科技工士会オリジナルの『災害時用即時義歯製作マニュアル』を作成し、実習形式の講習会を開催しました。
講習会には実習参加者と聴講者、合わせて20人程度が参加し、若手からベテランまで幅広い年齢層の方が集まっておりましたが、中には災害歯科医療に興味を持つ未入会者の方も来場されていました。当日は、本講習会の意義や災害歯科医療の重要性について講義を行い、10時半から実習に移行しました。実習は「総義歯製作」と「部分床義歯製作」の二部構成としました。普段、義歯製作を行わない方や、義歯製作経験のない若手技工士もおられましたが、やはり休日の講習会であっても技工机に向かうと技工士としての血が騒ぐようで、講師の説明を聞きながら実習補助者の手も借りつつ、参加者はみな真剣に実習に取り組んでいました。
講習会は午後4時まで行われ、片付けや掃除を含めてすべてのスケジュールを無事に終了しました。広島県の講習会としては比較的長時間の研修会となりましたが、参加者の皆さんからは満足感と充実感のある表情が見られ、開催側としても意義深い実習形式の講習会となったことを実感しました。
歯科技工士は、災害時における医療支援の重要な役割を担っています。歯科医師やその他の医療従事者、地方自治体と連携し、被災者の健康と笑顔を取り戻すための支援を行うことが求められます。本会では引き続き、災害時の迅速な対応力を高める取り組みを進めるとともに、歯科技工士が専門性を活かし,地域社会への貢献,被災者への迅速な支援を行える体制構築の実現に向けて地域の医療従事者や関係団体との連携を深めていきたいと考えています。


