諸課題に取り組むにあたって

会 長 中 西 茂 昭

はじめに

 歯科技工行為は歯科医療において依然重要な要素のひとつであり、国はこれを専門職たる国家資格歯科技工士と国家資格歯科医師に委ねたという事実.
 国民皆保険のもと、医療保険の歯科部門では歯冠修復及び欠損補綴などモノの作成に係る部分を含めて保険で償還しているという事実.
 法治国家における社会制度の成り立ちには集い声を上げるという改
正運動が必らずや伴っている史実.それらの認識をもつ。

日技の活動は、歯科技工士に求められ行う行為と与えられ収受する権利との「格差是正」に尽きる。故にその取り組みは、経済も教育もすべてが、歯科技工とそれを担う者の「妥当でふさわしい位置づけ」を社会施策として具現するためのものである。

連盟活動とは

 法治国家では、社会制度はひろく国会の認めるものでなければならない。その議院を構成するのは国会議員。国民の参政権には、直接参政と間接参政とがある。選挙権は間接参政の中核であり、日技は連盟活動を前面とし、会員の参政権を数倍にも十数倍にも活かしいくつもの社会制度改正を獲得してきた。この「議会に理解を求める働きかけ」は参政の要であり不可欠である.歯科技工士による社会施策へのアプローチを考えるとき、日技という器が未だ存在しない時代の諸先輩の努力に、連盟活動における理念の原点があると理解する。さらに翻ること半世紀に及ぶ多くの「歯科の技工を担った者たち」の社余貢献こそが、彼らに自信を与え立ち上がらせたのである.そして遂に「歯科技工士」という公の称号を得て、同時に社会的代表部として日技を築いた。その志と誠は、連綿と、脈々と生き続けている。そのような一世紀に及ぶ先達の責献に思いを寄せ、ここを原点として、歯科技工士の参政権を有効に働かせたいと考える。
 歯科技工士会活動の歴史は、入学要件・資格免許・保険政策・法律名称などすべて、歯科技工とそれを担う者の「妥当で、ふさわしい位置づけ」を具現するための闘いである。その具現には法令改正が必らずや伴う。法令改正には議員の理解・賛同が必要。連盟活動とはそのための仕事そのものである。

組織内候補擁立について

 進行中の組織内候補擁立準備策は、歯科技工士の参政を間接参政にだけ留めないための施策。被選挙権を行使する意思、国民代表となるべき将来の候補を輩出できる基盤、これらをはなから否定しては権利の充分な行使はあり得ない。連盟活動は、法治民主主義国家において必須であると確信する。まずは願い、次に動く。これが連盟活動であると考える。

大臣告示の認識

 そもそも、あの「大臣告示」の普及定着運動とは、医療保険のなかに歯科技工士の行為を認めさせ、委託業務の報酬制度を作りたいというもの。その思いは数十年に及び「告示」はこの運動に呼応して出された。しかし時々刻々と変化する政治行政展開と制度の不完全さを運動力で補なおうという思い、そして告示に対する期待との差異などによって当惑と困惑が起ったことは事実。あの告示に「保険に係る歯科技工を行った者に、相当点数分の金額の財産権があるか」と言えば、残念だがない。もし会員が「告示には請求権がある」と日披執行部が指導したと感じたところから当惑と困惑が惹起しているのならば、この運動には反省があって然るべきである。
 他方、健康保険で「製作技工」に要する費用が給付されているかという側面で言えば、技工相当分は支払機関から当時も今も歯科医療機関へ淡々と給付されている。この給付金は他に償遺されるべきではなく、被保険者である国民は医療保険機関に対し「この相当額を、本来の目的に充てよ」と主張できる。あるべき社会投資の本旨からして製作技工に要する額は減額させず、本来の目的つまり製作技工に充てるべきだからである。告示当時に出されたいくつかの行政文書の書面からもこの趣旨が伺える。
 私は「事実の誇張」がいけないと同じように「事実の過少認識」も良くないと、あの運動を捉える。昭和三十六年の皆保険開始から告示までの約三十年間、保険の中には「技工相当分」はなかった。まさにゼロの金額の多寡云々ではなく、対象にすら取り上げられていなかった。そこで全員のエネルギーを日技に運動化し、昭和六十三年に、少なくとも『製作技工相当割合』が示された。これは「歯科技工報酬」ではない。保険機関への請求権は付帯していない。しかし「不完全だから何ら意味がない」と、私たち自らが感じることは妥当ではない。「製作技工相当分が保険制度の中に存在する」ということが示されたことは紛れもない事実。
 歯科技工士の生業は各々の場で続けつつ、つまり「経済戦争」をできるだけ個々に押し付けないように配慮しながら、この勝ち得た「可能性の種」の不完全を改善してい。これが執行部の包括的責務と考える。

経済問題解決のために具体的対策

アウトラインとしては、まずは、歯科技工報酬を歯科参療報酬点数表に点数として明示すること、そして歯科技工報酬が安定して供給されるシステムの構築を図ることを確認したい。これを成し遂げるには周辺の整理、例えば歯科技工所を医療関連施設として法令に明記することも必要。加えて教育高度化、養成数適正化、全国統一試験実施中医協への意見具申等あらゆる面からの運動の総力によって経済基盤の確立が図られねばならない。そのための押し戻されない理論構築をしていきたい。

先の「質問主意書」と「答弁書」について

 会としての見解は議論を経るが、こうした公式文書は、慈意的に利する解釈もいけなければ、被害者眼鏡でみることも誤りであって、足しもせず引きもせず正に文面どおり認知することが重要である。幸いに今回の内容は、こんにちまでに日技が認識する公式見解を超えるものではなく、したがって、本答弁によって「今後の歯科技工料に係る見直し」が否定されているわけではない。ゆえに「国民皆保険のもとの保険歯科医療における歯科技工経済に、市場原理は真っ当に機能しておらず、その機能不全によって、国民は費用対効果において不利益を被っており、その不利益を解消するべく、政治・行政に対し、放任ではない、経済を含める歯科技工社会施策を求める」ことを、あらためて認識する。
 文言の正確な比較は、日技の担当部署で行い、理事会で精査する。
「日本歯技」の論説にも掲載する。

海外問題について

 圧倒的多数の善意の歯科技工士の皆様に考えてほしい。
 まずは「困りましたね」ではなく「困らないようにしよう」ということを。間違いなく、この国の歯科医療関連法令では、歯科技工は
「わが国の有資格者業務」である。保健施策としての大きな目標があるから業務独占にしている。本来はこの一点を歯科関係者が認識し履行するだけで十分なはず。圧倒的多数の善意の歯科技工士の皆様には、このことを最初にしっかり認識していただきたい。その認識が揺らぐと一部の行政も揺れるという経緯を体験した。
 他方、確かに現行医療関係法令は国内法であり、国外の見知らぬ誰かの何かの行為をそこに出向いて取り締まることはできない。そもそも歯科技工は『行為法』ですから、モノを前提とする薬事や通関法令
の対象となっていない。「悪意」はそこを突いた。直接的規定がない以上、何をしてもいい、僕らを取り締まれないでしょ……と。だから県技が動き日技も動いた。行政も対応した。その結果、現在彼らは
「サンプル模型」と謳いだした。マズイという意識はもった。
 日技は「現行歯科技工士法と療担規則の厳格な運用」を自分たちが行いつつ行政に求める。それでも彼らがとどまらなければ「薬事や通常法令の改正」が必要になる。
 遵法意識の涵養という意味では「内へのもの」と「外へのもの」で
取り組んでいきたいと考える。「内へのもの」は、法令改正について解説などを通じこの国の歯科技工界の意識を高めること。「外へのもの」としては、歯科技工士法令の英語版が完成した。この国の歯科医療の社会施策構造を法レベルで世界に発信するということは大切。なにしろ世界的には、歯科技工士を国家資格として認定し、これを社会的に教育養成し用いることで口腔保健を確保しようという施策自体が稀少。その意味で半世紀の歴史を有する我々には、世界責献という責務もあることを忘れてはいけない。国際語である英語版をHPで発信し続け、近隣国家の業界には会議などを通じ持参し説明し理解を求めたい。
 いずれにせよ、海外も中間搾取も……係る事業者は『利益よりもリスクの方が大きければおのずと小さくなる』という事実に注目し、有資格歯科技工士が結集し、行政に通い、我々が「黙っていない集団」であることを認識させ、使える法令は全て使い、対応する必要がある。日技は厚生労働省に、県技は県行政や保健所に、相互に連携しつつ取り組みたい。
 繰り返す。この国は、保健施策としての大きな目標があるから、歯科技工を「わが国の有賀格者業務」とし業務独占にしている。この一点を強く認識する土とが大切である。